金曜日, 7月 21, 2006

デバガメンでごわす。

それは18歳の頃の話。
チンがポール牧だったのと同じぐらい、
男なら誰もが日常的にやっていたと思うんだけど、
俺も場末のゲーセンでよく脱衣麻雀ゲームをやっていた。
その行きつけのゲーセンはアルバイト店員のオヤジがヘンな奴で、
背後から画面を覗き込んできては余計なアドバイスをくれるという
覗き大好き出歯亀オヤジ。

通称『デバガメン』

ちきしょー、サービスショットをタダ見しやがって!
理不尽さを感じながらも悶々と過ごす日々。
テトリスをやっていてもシューティングをやっていても
気付くと背後から『デバガメン』が出歯亀行為を。
気味が悪くなりいつの日かゲーセンからも足が遠いた、
そんな暗黒絵巻な青春の日々。

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その後学校も卒業し、社会人として働いていたある日。
終電近くなった帰り道に、ふと駅前のミスドをみると、
角のところで見覚えのあるオヤジが絶賛客引き中。
なんとゲーセンの『デバガメン』が、
白タクに転身していたのだ。

ゲーセン当時は住所不定ismを醸し出していた彼も、
儲かっているのか心なしか小奇麗なオヤジに。
目印は白いCAP。(白タクだしな!)
もちろん因縁のある『デバガメン』には近づかないように決め、
その日も30分待ちのタクシーの列に加わり、
次の日も45分待ちのタクシーの列に加わり、
いつの日か自分の中ではただの風景になっていた『デバガメン』。

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それで先日。
仕事帰りに地元のBARで軽く一杯のはずが、
ヘビー級の酒も飲んでしまい、飲み仲間も呼び出したりして、
楽しくてあっという間のシンデレラタイム。
いつものように推定待ち時間15分のタクシーの列に加わり
(うわー、早く帰って化粧室でお小水してぇ)
なんて考えていたそのとき。

「お兄さん何処まででごわすか?
原宿(戸塚)までなら1500円でいいでごわすよ?」

でた!
振り向けばそこには『デバガメン』!


白髪交じりで杖をつき恐らくもう70歳近くだと思われる彼。
断る理由もないので、普段は家まで1300円で行けることを伝えると
1000円で行ってくれることになり、交渉成立。

「普段は固定客ばかりなので客引きはしないでごわす」
「車はセルシオで乗り心地がいいでごわす」
「戸塚でもう35年もやってるでごわす」

そんなトークを聞きながら近くに停車中の『デバガメンカー』に初乗車。

「このセルシオはリッター3.5kmしか走らないでごわす」
「元々トラック運転手だったんで運転技術は問題ないでごわす」
「でも家は津久井にあるでごわす」(!!!)
「親子で使ってくれるお客さんもいるでごわす」
「お客さんには警官もいるでごわす」
「都内でもどこでも電話一本でかけつけるでごわす」
「駅前にいなくても電話一本でかけつけるでごわす」
「昨日は新宿から江ノ島まで10000円で乗せてきたでごわす」

そんな『デバガメントーク』を浴びせながら走るセルシオ。
どうでもいいけど、 お、遅せぇ・・・!!(漏れる)
道も普段地元の人も使わないような迂回路を、
それでいてどうみても制限速度40kmのところを35kmぐらいで走行。
さすが亀印の亀速度、これが『デバガメンスタイル』。

いつもの倍の時間を使ってようやく家に到着。
約束の1000円を支払うと携帯番号と名前を教えてくれ、
これから帰り道に困ったらいつでも電話するように言ってくれた。
最後に『デバカメン』に尋ねてみた。

「あのー、10年以上前に駅前のゲームセンターで店員やってましたよね?」
「いや、やってませんでごわすよ!!」

は、早えぇ・・・!!
話を遮らんばかりに即答でごわすよ。
声のトーンが変わったのを俺は見逃さなかった。

(以上、嘘のような本当の話でした)
※個人が特定されないように「ごわす語」はフィクションでごわす

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